Ⅱ チョコレート産業の現状

1.産業の概要

(1)規模

現在、イタリアのチョコレート国内生産量は260,300トンあり、その内トリノの年間生産量は85,000トンである。年間生産金額は8億5千万ユーロといわれている。トリノがヨーロッパのチョコレート文化発展に大きな役割を担っており、世界で最初にチョコレートの工業的な生産が行われた都市である。

しかしながら、イタリアとチョコレート大国と呼ばれるベルギー・スイスとを国内消費量・輸出量とで比較してみると、イタリアは両国に比べ圧倒的に国内消費が多くなっている。また、国内消費と輸出のバランスは、ベルギーと正反対である。世界中に広く出回っているベルギーのチョコレートに比べて、イタリアのチョコレートが世界レベルでの認知度の低さの原因となっている。

外国産チョコレートについて述べると、イタリアのチョコレート輸入量は現在64,750トンで一般的に国内産チョコレートに比べると低価格である。販売場所も街のスーパーやバールとなっており関税の引き下げにより、外国産のチョコレートがより安く手に入ることからチョコレート価格差がますます大きくなると考えられる。

(2)流通

イタリアでの流通経路は、基本的に日本とは異なる。

イタリアの流通経路は極めてシンプルであり、製造と合わせて小売も行う製造小売業なのである。よって、消費者への徹底したサービスと商品づくり、品質保持が可能になるのである。企業の多くが、昔から変わらない商品だけで長年経営が成り立っている要因である。

(3)今後

イタリア人の砂糖摂取量は多くはないが、昨今の健康志向ブーム38)から砂糖の摂取を控えめにしたいという消費者も増えてきていることから、砂糖控えめのチョコレート作りが試行されている。体に良い効果をもたらす機能性を持った食品素材の研究が進み、これらを原材料として使用したチョコレートの商品開発が行われている。消費者に安心して継続的に購入されるブランド商品は企業の収益の源である。

商品の更なる絞り込みが重要でブランド力強化に注力している。これが生存競争に打ち勝ち継続に繋がっていく。そして、ローコストオペレーションを可能にするということである。しかしながら、課題も抱えている。一つ目は、需要の拡大を図ることである。チョコレートー人当たりの消費量では、2006年では4.2kgだったが2008年では3.3kgと減少している39)。その原因は、少子化・デザート数の多様化などが考えられる。人口減少している状況下、需要の拡大は容易ではないと思うがチョコレートの楽しみ方は世代を超えて不変的であるという考えから、チョコレートの食べ方の多様性が検討されている。

二つ目は、原料問題である。チョコレートの主原料のカカオ豆の価格が2006年後半から高騰した。世界的な天候不順や投機、伝染病の影響が原因で良質なカカオ豆を確保しようと相場も引き上がったのである。各企業は、価格を抑えながらの品質保持に努めている。 三つ目は、安全性である。表示管理の徹底と、安全で健康に良い商品を消費者に提供していくことが、企業にとって社会的責任となっている。