Ⅰ チョコレートの街・トリノ

1.トリノの概要

トリノ市は、イタリア北西部フランスとスイスの国境をもつピエモンテ州の州都であり、1536年から1562年にかけてフランスに占領された後サボィア家25)に帰属し、1720年より1861年まで、サルデーニャ王国26)の首都であり、イタリア統一時はイタリアの首都でもあった。

面積130k㎡、人口約96万人である。人口規模からしてイタリア第4の都市であり自動車を中核とする国内最大の民間企業グループ「フィアット社」の企業城下町として発展した、ミラノに次ぐイタリア第2の工業都市である。

2006年の冬季オリンピック大会開催以降は、「工業都市」から「観光都市」へとイメージ転換に注力している。世界最大の工場といわれたリンゴット工場27)も近年、ショッピングセンター・コンベンションセンター・コンサートホール・劇場・美術館・ホテル等を含む都市型複合施設に生まれ変わっており、これまでの従来型製造業ではなく、科学技術分野の取り組みも積極的に行われている。

また、近年、遅ればせながら造られた地下鉄は公共交通機関の近代化に寄与し、市民の交通手段は、車からトラムと地下鉄の利用に移行している。2010年5月にはトリノ市内の自動車乗り入れ規制が強化されZTL centrale(トリノ市街中心部)での通行が禁止されている。長年の「車社会」からの脱却であり、車の乗り入れができなくなった場所は、トリノ市民の散歩広場となり得る。漫ろ歩きすることの好きな彼らの新しい空間の創出である。

芸術に強い関心と才能を育てる土壌であり、イタリアに於ける音楽・映画等メディア産業28)が始まった都市である。スポーツでは、サッカーチームのユヴェントス(Juventus)29)、トリノ(Torino)30を有する。日本では、名古屋と姉妹都市関係を2005年に結んでいる。