序章

2.研究方法と論文構成

研究方法としては、先行研究の分析に加えトリノのチョコレート企業4社、同じくトリノ市内にあるカフェ4店舗、日本国内に出店しているチョコレート企業2社に、ヒアリング調査を中心にフィールドワークを実施した。トリノ市民及びピエモンテ州知事2)、トリノ市役所のディレクター3)にインタビュー形式による意識調査を行った。

論文構成について述べる。Ⅰ章の「チョコレートの街・トリノ」では、トリノに関する基本的な情報を整理する。トリノがチョコレートの街といわれる所以を、その歴史から紐解いてみる。19世紀に起きたリソルジメント4)の中核を担い、オーストリアからの独立運動が最も激しく行われた場所でもある。4店舗のカフェに注目しそれぞれ比較分析しながら、チョコレートドリンクとして特権階級から一般市民へ浸透していく過程を、時代背景と照らし合わせながら調査し述べる。

Ⅱ章の「チョコレート産業の現状」では、現在のイタリアチョコレート産業の全体的な動きを把握し、トリノ市内に立地するチョコレート企業4社(カファレル社、グイーノ・ゴビーノ社、ペイラーノ社、ジェルトージオ社)に注目し、各社の動向を比較分析する。「家族経営」「高級化」「特異性」という3つの動きを挙げる。また、トリノチョコレートブランドの日本に於けるチョコレート市場規模や需要動向、消費者ニーズに注目し現状と今後の展開について、供給側の立場から考察し述べる。

Ⅲ章の「チョコレートを支える生活文化」では、チョコレートを通して見えてくるトリノの生活文化を食文化に注目しながら述べる。トリノは美食の街でもある。ここでは、チョコレートを固形の概念だけで考えるのではなくスイーツの1部分として考え、食文化の新しい提案を考察する。イタリアの食文化に於けるチョコレートの割合を分析し、トリノ市民の食生活に組み込まれている現状を把握し、消費する立場から考察し述べる。

V章の「結語」では、時間の流れと共に文化を創ってきたトリノ市民とチョコレートの関係をまとめ、展望を述べる。