序章

1.研究背景と目的

トリノは、イタリア第二の工業都市として、イタリア経済の発展に多くの恩恵をもたらしてきた都市である。2006年2月に開催された冬季オリンピック大会以降は、都市開発のために建設された地下鉄やトラム1)の発達によって交通インフラも充実し、現在は工業都市のイメージの払拭に取り汲んでおり、観光都市としての新たな活路に注力している。つまり転換期を迎えているのである。

トリノは、世界で最初にチョコレートの工業的生産がおこなわれた都市であり、トリノ及びトリノ郊外には、数多くのチョコレート企業が点在している。独自のチョコレート文化を創っているのである。チョコレートの街といわれる所以である。チョコレートは年齢、性別、職業、季節などに関係なく、トリノの市民の日常生活に溶け込んでいるようである。しかしながら、世界中に広く出回っているベルギーやスイスのチョコレートに比べると、イタリアチョコレートの認知度は世界レベルでは高くない。

そこで本研究では、チョコレートが飲料としてトリノに入ってきた歴史的背景、チョコレート企業の動向を調査し、チョコレートを通して見えてくるトリノの生活文化を考察していく。他国の文化を知るということは、日本の文化を知ることである。それが本研究のテーマであり、意義である。尚、世界的に認知度が低い理由についても言及していく。