Ⅲ チョコレートを支える生活文化

1.生活文化

トリノは、人ロー人当たりの緑地面積が欧州一である45)。数多くの公園や広場を有する。そして、市民が公園や広場を散策しながらチョコレートを口にする光景も多く見られる。ここでは広場が市民の生活にどのような役割を担っているかを述べる。

(1)カステッロ広場

トリノの最大の広場であり、多くの人々が散策に利用している。ユネスコ世界遺産であるサヴォイア家の王宮やマダーマ宮殿、王立劇場と歴史的建造物や歴史的背景を有するカフェ「バラッティ&ミラノ」46)が存在し、14世紀からサヴォイア家の権力を象徴する役割を果たしてきた。その空間を歩くだけでも1日や2日を過ごすことが出来る。

この広場からスタトゥート広場47)をつなぐ長さ1,700メートルの通りは欧州一長い歩行者天国道路であり、漫ろ歩きを楽しむ市民のコミュニケーション空間となっている。また、広場では種々のイベントが繰り広げられ、特に興味深いのがパントマイムショーである。ポルティコ48)のアーケードに並ぶブティック店舗に立ち寄るショッピング客と相まって賑やかさを呈している。

ポルティコは、雨に濡れずに歩けるその利便性から滞在時間の長さに比例した遊歩道になっておりトリノ市民は、このポルティコそしてこのポルティコから続く広場で会話をし、情報交換して個々のメディア形成を作っている。晴天・曇天・雨天と天候に影響されることなく楽しめるところが、この広場にはある。

(2)サンカルロ広場

トリノの応接間とも呼ばれる広場で美しいアーケードに囲まれ、この広場の周囲には高級ブランド店が立ち並び、カステッロ広場同様ウィンドショッピングや散策道として賑わっている。ポルティコのアーケード内の、「カフェ・トリノ」49)や「カフェ・サンカルロ」50)等のバロック様式の建造物に佇んで、或いは、そのファザード51)でチョコレートドリンクを飲みながら談笑する人々の光景がある。

サンカルロ広場の延長線にはポルタ・ヌォーヴァ駅52)がある。このサンカルロ広場とボルタ・ヌォーヴァ駅をつなぐ通りには、多くの店舗が立ち並び他都市からトリノを訪れる人々の観光遊歩道となっている。

広場は、公共の場であり出会いの場である。広場に隣接するカフェには、人が集まり読書をしたり会話を愉しんだりと、情報共有の場であり社交空間を創っている。これらのカフェはポルティコと呼ばれる回廊に点在し雨天でも濡れずに立ち寄れるので、優れている利便性は利用回数に比例しているのである。その多くが「Mio Cafe」(私のカフェ)といって、いきつけの店を持っている。

また、忘れてはならないのが「バリスタ」、「カメリエーレ」と呼ばれる給仕人の存在である。彼らは客とのコミュニケーションサービスに余念がない。ボスピタリティの提供が十分に行われているのである。イタリア人のコミュニケーション能力は、カフェ文化が生んだ才能だと推測される。

イタリアの生活の喜び・楽しみ調査

スポーツや音楽鑑賞、買い物の中にチョコレートの項目が入っているのがイタリアらしく興味深いのだが、男性と女性の比率では女性の方が高く年齢別では、ほぼ同じ比率である。単身者と既婚者の比率では単身者の方が上回っている。

チョコレートが、生活の喜び・楽しみとして挙げられているが、どこでどのように食べられているのかを更に把握するため、トリノ在住の10代~70代に対し無作為に「チョコレート嗜好アンケート」(チョコレート菓子を含む)を行ったのでその結果を述べる。

調査方法としてはアンケート調査、調査エリアとしてはトリノ市内、調査対象者として大学、病院、市役所職員、カフェ、バール、サッカー練習所に於ける10代~70代の男女、サンプル数103人、留置調査法方式、調査実施期間2009年9月11日~9月15日にDIAMOND INTERNATIONAL S.r.l.(ITALY)の協力のもとに実施した。

トリノを州都に持つピエモンテ州は北イタリアに属する。ここでは、北イタリア人と日本人の思考構造を挙げてみる。

北イタリア人は、ライフスタイルの中に仕事と自由時間を同じ比率で持ち、バランスの良い生活環境になっている。これに対し、日本人は、ライフスタイルが仕事になっており、余暇との比率が崩れているため、バランスの悪い生活環境になっている。

宮畑晋吾:腸内フローラとヨガ