3.トリノ・チョコレートの日本市場に於ける展開
ここでは、イタリアに本社を置くカファレル社とペイラーノ社、2社の日本における展開を挙げる。カファレル社の商品を取り扱う有限会社山本商店と、ペイラーノ社の商品を取り扱う株式会社日欧トレーディングの担当者にヒアリングを行った。ヒアリングの質問内容は次の通りである。
・ベルギーのチョコレートを、どのように思うか。(ベルギーのチョコレートの日本での展開をどのように思うか。)
・いつ出店したのか。
・なぜ日本に出店したのか。
・日本進出にあたり、何かしらの障害はあったか。
・現在、上手く推移しているか。
・多店舗展開を考えているか。
・イタリア国内と日本での販売戦略の違いはどうか。
・購買層と一人当たりの購買金額
(1)有限会社山本商店
2004年11月、有限会社山本商店がカファレル社と共同出資で作った直営店が神戸にある「カファレル北野本店」である。こちらのパスティッチェーレ山本剛史氏はカファレル本社で技術の研修を受け、チョコレートの販売だけではなく、チョコレートを使ったケーキやお菓子の製造・販売、そして店内で食べられるイートインコーナーも併設されている。
質問事項の回答は以下の通りである。
日本でのベルギーチョコレートの認知度は高いが、商品開発コンセプトや商品のクオリティに関しては、本社同様自信を持っているので、特別、感情は持っていない。ビジネスの進め方としては、イタリア人よりもベルギー人の方がレスポンスが早い、海外のニーズに合わせる柔軟性がある等、海外の商社にとって仕事がやりやすいと認識している。2004年11月、神戸にてカファレル北野本店を出店している。
有限会社山本商店は本来、衣類・家具の輸入総代理店であったが、1994年にカファレル社の代表と会い、当時日本への進出を考えていたカファレル社と山本商店の企業理念(ブランド力を第1に考えるファミリー企業であること)の合意のもと共同出資をし2004年に直営店を出店している。その際に障害はなく、現在順調に推移している。2009年には直営店2号店として東京駅地下に出店を果たしている。
アジアでは、韓国・中国でも国内企業との合同出資で直営店が出店しているが、上手く推移していない。日本は、カファレルチョコレート売上高はフランスを抜いてイタリアに次いで第2位である。多店舗展開に関しては検討中で、国内であと1~2店舗が理想である。現在、カファレル本社からニューヨーク、中国への展開を示唆されており、計画としては、2011年ニューヨークでカファレル本社と共同出資で出店予定である。
カファレル本社は1997年から、スイスのリンツ社の傘下に入っており、イタリア国内の販売戦略としては本来の高級志向路線と、新しく低価格路線の2本立てを検討している。高齢化に伴い、従来の購買層である60~70代の販売量の減少に歯止めをかけるべく、若年層を対象にしたマスマーケット化にシフトしている。日本国内では、高級志向路線での直営店展開にこだわっている。購買層は30~40代の女性が多く、平均購買単価は1,700~1,800円となっている。
(2)株式会社日欧トレーディング
従来、イタリアの衣料関係を扱ってきたが、イタリアの食品に関心を持ち、クオリティと企業理念の高さからペイラーノ社にオーナーが自ら直談判し日本国内の販売が実現している。こちらは直営店展開ではなく、関東、関西の百貨店のイベント開催時に商品提供している。具体的には、サロン・ド・ショコラやバレンタインイベント、クリスマスイベントなどである。
質問事項の回答は以下の通りである。
ベルギーのチョコレートはあまり意識していない。ペイラーノのチョコレート製造法や商品コンセプト、販売戦略などベルギーの商品とは全く異なっているので比較してはいない。2009年10月からペイラーノ社のチョコレートを取り扱っており、その理由として、ペイラーノ社のチョコレートの品質とこだわりに傾倒し日本国内での展開を考えたのである。
その際の障害はなく、ペイラーノ本社から日本での販売契約を取り付けた後、商談先の百貨店ではイタリアチョコレート老舗のブランドカで順調に商談が進み取り扱われることとなったのである。順調に推移しており1年目の売上は1,100万円であり、2年目の売上は3,000万円と前年の3倍となっている。多店舗展開に関しては、現在は百貨店に於けるイベント開催時の販売になっているが、近々、直営店の出店を検討しており、単純に商品の販売だけではなく、ペイラーノチョコレートを使ったチョコレート菓子の販売及び店内で食べられるパスティチェリアを予定している。
イタリアと日本の販売戦略は同じである。日本では、リピートや紹介で知名度が上がり時間をかけて顧客の確保にあたっている。購買層は30~40代の女性が多く、平均購買単価は3,000円となっている。
2社は、日本での展開に於いてまだ日が浅いので未開拓の所が多く、試行錯誤しながら企業努力を行っているようである。課題は共通して高級チョコレートの認知度アップと販路拡大である。
岩倉哲也