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チョコレートから見えるトリノの生活文化の研究(田島みわ)

本研究の要旨

本研究は、チョコレート文化発祥の地といわれる、イタリア・トリノのチョコレートとのかかわり方を、その歴史的背景から紐解き、チョコレートがトリノ市民の生活にどのように浸透し、役割を果たしているかを考察するものである。チョコレートを通して、供給する側のチョコレート企業の動向、そして、受給する側のトリノ市民のアイデンティティに迫ってみた。

チョコレート文化と関係が深いとされるカフェやバール、コミュニティの場として都市的装置を担っている広場を挙げる。この研究では、トリノに拠点を構えるチョコレート企業4社の現地調査、トリノ市民のアンケート調査、日本に於けるイタリアチョコレート輸入業者2社のヒアリング調査を実施し、現状の把握と分析を行った。

チョコレートは現在、食文化として、生活文化としてトリノ市民の日常の中に根ずいている。この2つを述べる時イタリアの家族主義について触れるのだが、今日、核家族という小単位の家族構成の中、希薄化している日本の現状と比較してみると、イタリア人の家族意識、ひいては地域意識の高さに直面するのである。このことは、家族経営中心のチョコレート企業の在り方にも如実に表れている。

イタリアは、その多くが家族経営中心の中小企業であり、規模拡大を良しとはしない社会的風土がある。それよりも独自性を持ち、質にこだわった商品づくりとサービスに注力している。いわゆる、オートメーション化された大量生産ではないのである。チョコレート企業を通して見えてくる企業アイデンティティについて述べている。トリノのチョコレート文化を研究・考察していく過程で、アメリカ追従型の経済至上主義に傾倒している日本の文化の疲弊を意識せざるを得ないのである。

文化は1日にして成らずである。実際、トリノも長い時間をかけてチョコレート文化を創ってきた。そして、この文化を人々は享受し楽しんでいる。他国の文化を知ることにより、日本の文化の大切さを知る。トリノのチョコレートを通して文化の意義を考え、生活の中で育まれている事実を再認識したい。本研究の主旨である。